抗がん剤治療を受けると、多くの人が悩むのが「脱毛」です。髪が抜けることは体調だけでなく心の健康にも影響し、不安を強める原因になります。そこで注目されているのが「抗がん剤 頭皮冷却」という方法です。ここでは、頭皮冷却の仕組みや効果、注意点、費用、そして日本国内での広がりについて説明します。
頭皮冷却の仕組みと流れ
頭皮冷却は、抗がん剤の点滴を受けている間に頭を冷やすことで髪を守る方法です。流れは次のようになります。
- キャップを装着: 治療が始まる前に、専用の冷却キャップを頭にしっかりかぶります。
- 冷却液を循環: キャップは機械につながっていて、中を冷たい液体が流れ続け、頭皮を一定の温度で冷やします。
- 治療中も継続: 点滴の間ずっと冷却を続け、抗がん剤が毛根に届きにくくなるようにします。
頭皮が冷やされると血管が収縮し、抗がん剤が毛根に届きにくくなります。また毛根の細胞の働きも一時的にゆるやかになるため、髪が傷みにくくなり、結果として脱毛をある程度防ぐことができます。
頭皮冷却の効果
頭皮冷却を行った患者さんのうち、研究やデータでは約4〜6割が「ウィッグを使わなくても生活できるくらい髪を残せた」と報告されています。特に乳がん治療でよく使われる「タキサン系」という薬では効果が出やすいことが知られています。一方で「アントラサイクリン系」という薬では効果がやや弱まる傾向があります。
それでも頭皮冷却をしない場合と比べると、多くの患者さんが髪を維持できることが分かっており、大きな意味があります。完全に髪を守れるわけではありませんが、髪が残ることで気持ちの負担を減らせる点が重要です。
副作用と注意点
頭皮冷却は薬を体に入れるわけではないので、命にかかわるような副作用はありません。ただし処置中に不快感が出ることはあります。例えば、頭を強く冷やすので「とても冷たい」「頭が痛い」「あごが痛い」と感じる人がいます。これらの症状はたいてい処置をしている間だけで、時間がたつと落ち着きます。また、誰でも使えるわけではなく、血液のがんや脳腫瘍の患者さんには使えません。これは、冷やすことで抗がん剤が行きわたりにくくなり、病気が残ってしまう心配があるからです。
日本と海外の費用
日本
日本では、頭皮冷却はまだ保険がきかないため、治療を受ける人が自分で費用を払う必要があります。1回あたり1万円前後から数万円かかることがあり、専用キャップを自分専用で購入すると初回に大きな出費が発生します。長期的な治療になると、金銭的な負担が大きいのが現状です。
海外
アメリカでは、最近になって一部の保険で頭皮冷却がカバーされるようになりました。さらにイギリスやヨーロッパの多くの国では、国の医療制度のもとで無償で受けられる場合が多く、日本と比べて患者さんの負担がかなり軽くなっています。
日本国内での普及状況
頭皮冷却装置の中で有名なのが「パックスマン」というシステムです。これはイギリスで開発され、今では世界中に広まっています。イギリスでは国の病院の多くで導入され、アメリカでも大きな病院やがん専門の施設で利用されています。日本国内でも導入する病院が増えてきています。現在では60か国以上で導入され、毎年多くの患者さんが使っています。さらに国際的にも「患者の生活の質を守る大切な方法」として専門家に認められています。つまり、脱毛をただ我慢するのではなく、技術でサポートできる時代になってきているのです。
頭皮冷却の持つ意味
抗がん剤治療で髪が抜けることは、体の変化だけでなく心の支えを失う感覚につながります。頭皮冷却はすべての人に完ぺきな効果を保証するものではありませんが、髪を少しでも守れる可能性があります。髪を保つことは外見の維持だけでなく、自分らしさを守り、治療を前向きに続ける力にもなります。髪を守れるかもしれないという選択肢があること自体が、患者さんにとって大きな安心につながります。
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